「サンジェルマン殺人狂騒曲」事件
「Lanuit de Saint-Germain des-Pre′s」
(サンジェルマン殺人狂騒曲)
このフランス語の原書を2人の翻訳者が訳し、一方(原告)が他方(被告)を翻訳の複製であるとして提訴した事件があります。
この事件で東京地裁は、同一の原書を訳せば、内容や用語は「同一の表現となるのはむしろ当然」と判断しています。
原告が独創的であると主張する訳は独創的でなく、辞書に載っている訳である、誰が訳しても同じようになるから、被告の訳は原告の訳の複製ではないという結論になりました。
たとえば、“disputait”という単語。
原告は「興じていた」と訳し、被告訳も同じです(通常の訳は「争っていた」)。
しかしこのことばが置かれている場面を考えよ、ということです。
これは客とバーテンダーがサイコロ(ダイス)で賭けをしている場面であり、「争っていた」を「興じていた」に変えて訳すのは訳者として当然、原告独特の訳ではないと被告は反論しています。
(東京地裁、昭和59(ワ)11837号)。
他人の翻訳文をそのまま写したら、著作権侵害です。しかし、ことばには著作権はないし、その訳語にも著作権はないです。
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